「愛はいかが?」

10月31日、「柴田聡子の神保町ひとりぼっち3」を観に行った@神保町試聴室。柴田聡子さんの音源は最近繰り返しよく聴いていて、ライブを観に行ったのは初めてだった。知らない曲をたくさん歌ってた、何曲聴いても、歌ってる姿をいくら見つめても彼女がどういう人なのかあんまりわからなくて、透明な水を、がぶがぶがぶとたくさん飲み込んだ、ような気持ちになったライブ後だった。本編の最後に「最近よく歌ってるカバーです、現在の心境です、しみったれた曲ですけど」と言って、「愛しちゃったのよ♪」って、歌い出して、どきどきした。恋愛を歌った曲になるとなぜか聴いてる私が変にどきどきして、私のバカな気のせいかもしれないけれど、きっといい恋愛をしてるんだろなと思っていた。3日後の今になって、あの歌やあの歌の歌詞やメロディが思い出せて、不思議な感じだ。
11月1日、「歌人になる、俳人になる」という、歌人穂村弘俳人佐藤文香の話すNHKカルチャー講座へ行った。短歌も俳句も詠んだことないくせに短歌が好きなので、というのと、穂村弘の歌集を読んだりして彼が果たしてどういう風に喋るんだろう聞いてみたい、という理由で行ったのだけれど、それらは確かに文学の世界にあり、専門的な世界であり、業界があり、集団があり、上下があり、とリアルなシビアな話を周りはうんうん頷きながら聞いているので、随分場違いなところに来てしまったものだと思った。穂村弘は呪文を唱えるように流暢に話し、ときに素晴らしく上出来な冗談を言う。ちょっと挙動不審だった。若い俳人と話す姿はベテランの風格だった。俳人佐藤文香という方は、夏に出た『ぼくらの17-ON!』という高校生の俳句マンガの監修をしている方で、その漫画は読んで好きだなと思っていたので、つながっていくものだなと。彼女は若くて、「私は、俳人になりたくなんかないんです。」と、講座の終わりに講座タイトルに反したことを言い切ってしまう。ある定型のステップを踏んで歌人として有名になった、今ではベテランの風格を携えた穂村と並ぶとイマの若者、といった少し危なっかしい印象を受ける、けれどその感覚や考え方、というのは非常に共感できた。例えば短歌や俳句には新聞の選歌委員というひとつの地位があるが、今の人は50年後に新聞なんてあるかわからないという状況で今のシステムの崩壊の危機感があり、また選択肢が多くて迷いがある、と穂村が何度か言っていたけれど、そういう感覚は今の若者の中にはある程度共通してあるものなのだろうかなあ、ということを考えていた。
10月26日、SWANNY「ファスビンダーの『ゴミ、都市そして死』」を観た@紀伊國屋ホール初恋の嵐のPV「真夏の夜の事」に出演していて印象的だった緒川たまきが主演、音楽が石橋英子withぎりぎり達の生演奏、といったくらいの前情報のみで足を運ぶ。大きいホールでやる大道具がそびえている演劇というのはあまり観ないのでそわそわする。すべてが素晴らしい、という感想は持たなかったけれどグッとくる瞬間は確かにそこにあって、それと台詞が詩的で決め台詞然としたものが随所に散りばめられていてよかった。緒川たまきが艶やかな質感の蒼いドレスを着て立ち、一人語りをするシーンはアール・デコのミューズを見ているようで素晴らしく美しかった。 「もうこの役は降りるわ、神様。さよならするの。私に幸せをくれる人をこれから見つけるつもりよ。」 人が死んだり殺されたりしても全然悲しくなかったのだ、その劇の都市の中では。それって狂ってるよな、都市って。 「心は神様のものよ、お嬢様、貴方のものじゃないの。いわばレンタル品よ。」