花のように鳥のように

お金がないくせに酒が飲みたいのならば家で飲め、と言われたので、そのとおり部屋で一人でチューハイを飲んでる。酔ったふりでもする。グラスに注いだら甘い香りの炭酸がぱちぱちとはねた。ギターをさわり始めた。簡単なコードの曲から練習。「おだやかな暮らし」を歌って、録音したものを一人で聞き返して満足している。へたっぴだ。麓健一の「雨と花嫁」を雰囲気だけなぞってみた。ちょっとだけ近くなった気分だ。うたたねした夢の中で、麓さんと対面していたような気がしている。今日は昼ご飯と夜ご飯を作った。料理は私にとって慣れないもので、イベントのようだから楽しい。特に野菜を調理するのが最高に楽しい。あの鮮やかな色!茄子!日々積み重ねだ、と言い聞かせる。結局何もしなかった一日だった。
Sunrain Recordsで頼んだマコメロジーの『マ コメンタリー』が届いた。とても良い。メロディーらしくないけど耳に残る歌、今にもばらばらになりそうだけれど計算され尽くした音のようにも思える。美しい。なにより素晴らしいと思うのは、スピーカーから流して聴いていると、彼女たちの音楽に、"いま部屋にいる私"まで見透かされてる気分になることだ。何度聴いても。どんなことをしている私でも。そのせいでいつも、ドキッとするのだ。ジャケットも好き、ずっと眺めていられる。表の絵はもちろん、ジャケットを開くと現れる海らしい部分の色合いも好き。歌詞には「船」がたくさん出てくる。しばらく海を見ていない。
どこの道端でも、薄いオレンジ色のポピーが咲いている。ナガミヒナゲシというんだそうだ。この花が好きだ。どこで見てもみんな同じ色で咲いているから。細長くてきゃしゃな茎、少し傾げて花をつけて、風が吹くとすぐにゆらゆらと揺れる。触れられない。